後輩の彼女がちょっとだけオカシイ。

内容
「俺」と「後輩」は付き合って一ヶ月にも満たない出来立てホヤホヤのカップル。
向こうから告白してきて、「俺」はその場の勢いでついOKしてしまった。
「後輩」は世間的に見ればそこそこカワイイと思える顔立ち。大して「俺」は彼女が偏差値60なら45くらいの下の中ぐらいには整った顔立ちをしている(なぜ告られたのだろう……)。

「後輩」とはまだデートにも行ったことがなく、メールを交換し合った程度にしか距離が近づいていない。そこまで進展を急ぐ気はないが、向こうがどう思っているのかは気になる。

ところでその「後輩」にはちょっとオカシなところがあり、よくメールでやりとりをするのだがその文面がどこがズレているのだ。
馬鹿と天才は紙一重というけれど、「後輩」はそのどちらにでも当てはまるんじゃないかと思う。

そんな毎日やってくるメールに対して、「俺」はなんとかかんとか返信を続けていた。

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後輩 『おはようございます、先輩』

俺 『おお、おはよう』

ちなみに今、午前 7時半

後輩 『先輩って朝食なに食べるんですか?』

俺 『味噌汁とか好きだな』

後輩 『しじみ70個分ですか?』

俺 『いや、松茸の味』

後輩 『あれ味噌汁じゃなくてお吸い物らしいですよ?』

俺 『あれ、そうなのか? 知らなかったわ。ずっとそうだと思ってきたんだけどな』

後輩 『こんど現物飲ませてあげますよ』

俺 『しじみ70個分か?』

後輩 『わたしワカメ好きなんですよ』

後日、後輩は専用の容器だという水筒のような入れ物に味噌汁を入れてきた。
中にはしじみは一つも入っていなかったが、豆腐とネギと、ワカメが大量に飛び出してきた。
ワケワカメ。

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残業

後輩 「先輩、たすけてください」

俺 「どうした。何かあったのか?」

後輩 「間違えました。お腹すいたので何か買ってきてください」

俺 「野菜ジュースで良いか?(怒)」

後輩 「牛丼が食べたいです」

俺 「そんなんいま食ったら胃にもたれるだろ。もっと消化のいいやつにしろ」

後輩 「これでも立ち食いそばとか行きたいの我慢してるんですから、これくらい良いじゃないですか」

俺 「わかった。サンドイッチなら好きなもの買ってやるから」

後輩 「コンビニですか? ならわたし、コロッケパン食べたいです」

俺 「野菜ジュースも付けとくからな」

そして俺は猛ダッシュでコンビニに向かう。
道中携帯が振動し、急停止して開いた。

後輩 「先輩」

俺 「どうした。追加か? 一つくらいなら別にいいが」

後輩 「残業おわったので帰ります」

俺 「よし牛丼おごってやる。だから帰るな」

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風呂上り

後輩 「先輩、起きてますか」

俺  「ねてる」

後輩 「どうやったら起きてくれますか」

俺  「耳元で愛をささやいてくれ」

後輩 「月がきれい以上の言葉が思いつかないです」

俺  「遠くから見てるのにきれいかどうかなんてわからんだろ」

後輩 「このくらいの距離でちょうどいいんですよ」

俺  「遠すぎやしないか」

後輩 「背伸びすれば届きますよ」

俺  「身長150もないだろ。酔ってんのか」

後輩 「むしろ今から飲みたい気分です」

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公認

後輩 「先輩、助けてください」

俺  「もうその手には乗らん」

後輩 「彼氏ができたって言ったら、お父さんが泣いて喜んでます」

俺  「いっしょに泣いて差しあげろ」

後輩 「うわああああああん! うわああああああん! おぎゃー!」

俺  「最後のはちがうだろ」

後輩 「なんか送れって言われました」

俺  「もう少し待ってくださいって返しといてくれ」

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秘密

俺 「新人研修はじまったな」

後輩「一年前なのに全然記憶ないんですよね。わたしってどんな感じでした?」

俺 「最初は普通だったと思うけどな、歓迎会でも大人しかっただろ」

後輩「そうでしたっけ。何も覚えてないです・・・」

俺 「まぁそうだろうな」

だって、お前その時ベロベロに酔ってたもんな。
周りにお酌するお前を見かねて、部長が気を利かせてくれなきゃ、たぶんお前ずっと酌ばっかしてたろ。

後輩「思い返してみるとあの時からなんですよね、みんなと仲良くなれたのって。けど聞いても誰も何も教えてくれなくて、先輩は何か知ってませんか?」

俺 「あーなんだっけな、部長のカツラを吹っ飛ばしたんじゃなかっけか?」

後輩「え、部長のあれカツラだったんですか」

俺 「そうだ、誰にも言うなよ。みんな知ってるけどな」

後輩「わかりました フキフキ( ´∀`)つ(〇-〇)」

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カロリー

後輩「先輩、ラーメンかうどんどっちが好きですか?」

俺「どっちかと聞かれると迷うが、うどんだな」

後輩「わたしはソバです」

俺「なぜその二つにした」

後輩「わたしそばアレルギーなんですよ」

俺「アレルギーなのに好きなのか。辛いな」

後輩「食べたら死ぬかもって思ったら、こう、ぞくぞくしちゃって」

俺「それは別の病気だ」

後輩「先輩でも治せないんですか?」

俺「どうして俺なら治せると思った」

後輩「わたしラーメンは嫌いですけど、うどんはまだ食べたことないんですよね。先輩が好きならちょっとは期待できるかなって」

俺「俺カレーうどん好きなんだが」

後輩「わたし牛丼にもカレーかけますよ」

猛者だった。

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後輩「先輩の子供の頃の夢って何だったんですか」

俺「野外実習で消防署に行ったときに見た消防官の人がかっこよくてな。それから一週間くらいはずっと消防士になりたいと思ってたな」

後輩「一週間後には変わったんですか?」

俺「いや、無理だと諦めはしたけど、他になりたいものは見つからなかったな」

後輩「先輩、諦めるのは早いですよ!」

俺「何だ急に」

後輩「今からでも探しましょう! 先輩の夢」

俺「いや、俺はいい。むしろ応援する側だ。お前の方こそ、何か目標とかないのか」

後輩「ありますよ。わたし朝弱いので、早起きできるようになりたいんです」

俺「なるほどな、詳しく聞かせろ」

後輩「まず、わたしの朝はそんじょそこらのものとはワケが違って」

俺「どんな風にだ」

後輩「気づいたら、携帯のバッテリーが切れかかってるんです!」

俺「だろうな。寝ろ」

後輩「オヤスミナサィZzz・・」

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一万円

後輩「先輩、数年後に一万円が新しくなるみたいですよ」

俺「一万円だけじゃないけどな。載るのって誰だっけか」

後輩「なんか学校の校長先生みたいな感じの人だったと思います」

俺「例えがわかりやすいな。渋沢栄一だったな」

後輩「でももう『諭吉』って呼べなくなるんですよね。友達が一人いなくなる感じですよ」

俺「そう思ってるのはお前だけだ」

後輩「けど、そうなると新入りを快く迎える必要がありますよね」

俺「新入りってお前な。転校生じゃないんだからな」

後輩「『栄ちゃん』と『渋ちゃん』どっちが良さそうです?」

俺「ちゃん付けかよ」

後輩「栄一って呼びにくいじゃないですか。こっちの方がカワイイですよ」

俺「けどなぁ」

後輩「じゃあもういいです。『校長』にしましょう。こっちの方がわかりやすいです」

俺「やめろ。余計使いづらくなる」

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宇宙人

後輩「昨日UFO見たんですよ」

俺「ほう」

後輩「夢の中で」

俺「それなら俺もあるぞ」

後輩「ホントですか。わたし宇宙人とも喋りましたけど」

俺「俺なんてE.Tの真似させてもらったんだからな。念話だぞ念話」

後輩「それくらいで自慢しないでください。わたしは宇宙人とハイタッチしたんですから」

俺「はっ、ハイタッチくらいで何をエラそうに。俺なんて腕相撲したぞ。宇宙人めっちゃ腕相撲強いぞ」

後輩「宇宙人の恋の方がすごいですよ。彼ら、好きになった人ができても自分からは絶対に「好き」って言わないんですって。だから相手にどうやって好きって言わせるか研究してるらしいんです」

俺「なんだよそれ、さっさと言っちまえよな」

後輩「けど楽しいみたいですよ。意外と」

俺「そうなのか?」

後輩「気づいたら好きってなってる方が、なんか勝った感じしません?」

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表情

後輩「先輩が今までで一番怖かった映画って何ですか」

俺「俺ホラー映画苦手なんだよ。家に一個だけあった『ホーンテッドマンション』って映画観て、ああこれはもうダメだって思ったな」

後輩「あれそんな怖くないと思いますけど」

俺「いや怖いだろ。真顔でドア開ける執事なんてどこの国にいるんだよ」

後輩「ノルウェーあたりに多そうじゃないですか」

俺「あれは寒さで顔が強張ってるだけだ。そういう人に限ってたいてい優しいからな」

後輩「じゃあ先輩がいつも目つきが悪いのも寒がりだからなんですか」

俺「俺は緊張しやすいんだよ。緊張する場所にいると顔が強張るんだ。そういうお前も、たまに険しい顔してるときあるよな」

後輩「あれですか。あれはトイレを我慢してる顔なんです」

俺「え」

後輩「冗談です。栄養ドリンク飲んで眼光が開くとああなるんです」

俺「話しかけづらくなるからやめてくれ。頼む」

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後輩「あだ名ってけっこう大事だと思いませんか」

俺「確かにな」

後輩「先輩ならわたしのことどんな風に呼びます?」

俺「おまえ」

後輩「それはいつもの呼び方じゃないですか。あだ名で」

俺「奇人だな」

後輩「奇跡の人ですか?」

俺「ある意味な。感謝しろよ、親に」

後輩「えっへん!」

俺「胸を張るな。背中を丸めろ」

後輩「丸めたところで感謝は伝わりませんよ」

俺「まぁ、言われてみれば確かにな」

後輩「先輩もわたしみたいに目を見て『ありがとう』って言えるようにしましょうよ」

俺「おかしいだろ。急にそんな変化があったら」

後輩「大丈夫ですよ。そっちが本当の先輩ってことにすれば。いっそのことスマイリーって呼んでもらったらどうですか。そうすれば今の強面な感じもちょっとはマシになるかもしれませんよ」

俺「朝から終始笑顔で会社にいる俺を想像してみろ」

後輩「すいませんでした」

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後輩「もし餓死寸前の状態だったら、どれだけ嫌いなものでも食べられそうじゃないですか」

俺「そこまでしないと食べられないっていうのも不憫だと思うけどな」

後輩「実はわたし豆腐きらいなんですよ」

俺「そうなのか。まぁ嫌いな人は多いかもな」

後輩「麻婆豆腐とかならまだいけるんですけど、単体で出されると絶対にムリなんです」

俺「生で食べることもなかなか無いと思うが」

後輩「けどもし、一週間くらい水だけで過ごして冷蔵庫に豆腐しかなかったら、もしかしたら食べられるかもと思ったんです」

俺「いや、どうだろうな。ていうかもう実践してるのか?」

後輩「いま三日目です。めっちゃお腹すいてます」

俺「空腹を紛らわせるために連絡してきたってことか」

後輩「ちなみに先輩は今何してるんですか」

俺「カレーうどん食ってる」

後輩「きぃぃぃぃ!」

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後輩「巨乳ってかわいそうですよね」

俺「どうした、ひがみか?」

後輩「わたしだって平均はありますよ。じゃなくて、胸大きいと色々あるんだなぁって」

俺「たとえば何だ」

後輩「ハグしたときとか、胸が押されて痛いんですよ」

俺「そうなのか?」

後輩「まさに胸が締めつけられる感覚らしいです」

俺「男からしたらその方が良いんだろうけどな。女性からすると嫌なのか?」

後輩「そうでもないです。肌と肌が密着するのは、けど胸だと苦しいだけというか」

俺「抱きしめる場所か。脇の下とかどうだ。懐に潜り込むみたいに」

後輩「タックルじゃないですかそれ、嫌ですよ。ついでに脇の匂い嗅いできたりしたらぶん殴ります」

俺「そこまでは言ってないんだが。じゃあバックハグとかしかないんじゃないか」

後輩「嫌ですよ。ついでに服の中まで覗いてきそうじゃないですか。変態じゃないですか」

俺「変態はおまえだ」

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ロマン①

後輩 「結婚したら苗字が変わるっておかしくないですか」

俺「おかしいか? 俺にはよくわからんが」

後輩「たとえばシングルマザーの母親を持つ女の子がいて、その子には好きな男の子がいるんですけど」

俺「いきなりどうした。しかも設定が極端だな」

後輩「その男の子はその子のことをいつも「橘」って呼ぶんですけど、お母さんが再婚して、苗字が「坂本」に変わるんです」

俺「なるほどな」

後輩「けど変わった苗字が実は男の子と同じもので、男の子は同じ苗字だから、その子のことを前みたいに気軽には呼べなくなるんです」

俺「名前で呼び合えば良いだろ」

後輩「そんなの恥ずかしくてできませんよ!」

俺「最初はそうかもしれないけどな。どっちかが先に呼べば案外恥ずかしくないと思うぞ」

後輩「そういうものなんですか」

俺「それに、苗字が変わったからって別に呼び方を変える必要はないだろ」

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ロマン②

後輩「どういうことです」

俺「いつも呼んでるようにすればいい。たとえ周りがその子のことを変わった方の苗字で呼んでいたとしても、男の子の方が元の苗字で呼んでいれば問題はないと思うけどな」

後輩「確かに。二人の時だけ橘って呼んであげれば、苗字を忘れないでいられますね」

俺「そっちの方が特別が感じがするだろ」

後輩「めちゃくちゃロマンティックですよ! 中学高校とその苗字での思い出をたくさん作っておいて、結婚したらまた違う苗字になるっていうのも、なんだか大人の階段を登るみたいで素敵です」

俺「そのためには男子がそれに気づく必要があるんだが」

後輩「女の子の方からいつも通りにしてとは言えませんしね。けど気づくかなぁ」

俺「わからん」

後輩「先輩は結婚したら、奥さんのことを名前で呼ぼうとか思ってます?」

俺「お前って呼ぶだろうな」

後輩「今と変わらないじゃないですか笑」

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特別編 サンタ①

後輩『メリークリスマス!』

俺『仕事中だ。あとにしろ』

後輩『仕事っていうか残業でしょ、後輩ちゃんの。無理に引き受けるからですよ』

俺『予定が入ってたらしいからな。それに急遽入ってきた仕事だ。それで予定が潰れたらモチベーションに響くだろ。俺は幸い、今日は予定がなかったからな』

後輩『すみません』

俺『気にするな。クリスマスを家族と過ごすのは海外じゃ普通だ』

後輩『ここ日本ですよ』

俺『いいんだよそういう細かいことは。それでどうした。大切な家族との時間を削ってまで俺に伝えたいことでもあるのか』

後輩『楽しい時間は十分過ごさせてもらいました』

俺『じゃあもういいだろ。子供じゃないんだからサンタなんて待ってないで寝ろ』

後輩『クリスマスはね、がんばった人全員にプレゼントをもらう権利があるんですよ』

俺『なんだそれ。聞いたことないぞ。いま作っただろ』

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特別編 サンタ②

後輩『ともかく、大人のクリスマスはむしろここからが本番なんです』

俺『やめろ。余計に惨めな気持ちになる』

後輩『先輩がいま一番ほしいものって何ですか』

俺『なんだ急に。サンタの真似事か?』

後輩『いいから言ってくださいよ。何でもいいですから』

何でも・・・か。
そうだな。

俺『でっかいクリスマスケーキだな。🎂こんなやつだ』

後輩『本当ですか? 嘘ついてるんじゃないですか』

ああ、そうか。
そうだった。本当は・・・

「温かいものが飲みてえな。手がもう、冷たくて動かねえよ」
「はい」

あれ、いま声がしたような。
俺まだ何も送ってないよな。
ってまさか・・・。

「先輩、知ってました? サンタクロースはね、誰でもなれるものなんですよ」

「ああ、知らなかったよ。助けてくれ、一人じゃ終わりそうにない」

「ガッテン承知!」

「サンタはそんなこと言わねえ」

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あっさり

後輩「今から東大に行きたいって言ったらどうします?」

俺「行って何かしたいことがあるのか?」

後輩「え、いやまだ決めてないですけど」

俺「じゃあやめとけ」

後輩「・・・ハイ」

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訓練

俺「オイ、起きてるか?」

後輩「むにゃむにゃ…」

俺「起きてるな。出ろ」

後輩「あと10分」

俺「ダメだ」

後輩「じゃあ5分」

俺「5分も縮められるなら3分でいけるだろ、早く起きろ」

後輩「働きたくないよぉ~」

俺「俺は掲示板か? おい」

後輩「はたらきたくないでござる!」

俺「悪化してんじゃねえか」

後輩「わたしが起きたところで世界に何の変化もないですよ」

俺「急なネガティブやめろ」

後輩「起きろといわれるほど起きたくない、にんげんだもの」

俺「唐突なみつをはやめろ。全人類が皆そんな純粋だと思うなよ」

後輩「片足でました」

俺「よし、その調子だ」

後輩「外は別世界です。わたしではとても生きていけません」

俺 「諦めるな、諦めたらそこで試合終了だ!」

後輩「先輩」

俺「どうした」

後輩「はたらくって何なんですかね」

俺「悟ってんじゃねえ」

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特別編 壁打ち①

私「で、相談って何なの?」

友達「うん。最近ね、彼氏とあんまりうまくいってないんだ」

私「そっか。でも私じゃ良いアドバイスとかできないと思うんだけど」

友達「ううん、話聞いてくれるだけでいいの。だって彼、最近連絡もくれないし、私が何聞いても『別に』しか答えなくて。酷くない?」

私「さあ」

友達「それにさ、インスタのストーリーに同じ部署の女の子たちとスキーに行った写真あげてるんだよ?」

私「○○もよくやるじゃん」

友達「だって私のは遊びだもん。けど向こうは手とか繋いでるし、一緒に滑ったりとかしてるんだよ」

私「向こうも遊びなんでしょ」

友達「それだけじゃないよ。私の知らないところで女の子たちとパーティーしてるし。しかも彼のウチだよ?」

私「え、いいじゃんそれなら」

友達「良くないって。彼に問い詰めたけど何も言ってくれないし」

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特別編 壁打ち②

私「それはキツイなぁ……」

友達「でしょ? しかも向こうから着拒してきたんだから。普通こっちがするもんでしょ。それでね、彼が正直に言ってくれるまで、私からは連絡取らないことにしたの」

私「○○はそれでいいの?」

友達「だって、彼が私のこと裏切るはずがないもの。私は彼を信じてるから」

私「そっか。○○がいいんならそれでいいんじゃない」

友達「うん、ありがとね。いっぱい話せて超スッキリした」

私「よかったね。けど、たぶん壁に向かってさっきみたいに喋っても同じくらいスッキリしたと思うよ」

それ以来その子とは顔を合わせなくなった。

先輩にメールしよ。

私『先輩、わたしがメールしなくなったら先輩はどう思います?』

先輩『やっと真面目に早起きし始めたんだなと感心する』

私『聞いたわたしがバカでした』

まれに変な方向に投げ返してくるイジワルな壁もあるみたい。

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彼氏彼女

後輩『後輩ちゃんが彼氏と別れたいって言ってるんですけど、先輩ならどういう別れ方なら納得できますか』

俺『まず理由を聞かせてくれ』

後輩『他に好きな人ができたみたいなんです』

俺『それを直接言えばいいんじゃないのか』

後輩『けど彼女、その彼氏に色々プレゼントとかもらってたみたいで。何も返さずに別れるのは後ろめたいって言ってるんです』

俺『お前はどうなんだ』

後輩『私ですか?』

俺『俺がそうやってプレゼントするような男で、お前は別れるときにどれだけ返すんだ』

後輩『一万円くらいですかね。ホテル代です』

俺『まだ行ったことないだろ』

後輩『ですね。でもそれ以外のことは、彼氏彼女としての時間だから、恨みっこなしだと思ってます』

俺『それでいいよ。彼女にそう言っといてくれ』

後輩『わかりました。あ、でも私は割り勘でもいいですよ』

俺『そこは男の見せ場だろ』

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マイ診断

後輩『先輩って好き嫌い激しいほうですか?』

俺『いや、わりと何でも食べるぞ』

後輩『先輩って思ったことはっきり言うタイプですか?』

俺『見てたらわかるだろ』

後輩『先輩は細かいこと気にするタイプでしたっけ?』

俺『お前の基準で細かいとするなら、普通くらいだろうな』

後輩『嫉妬するタイプです?』

俺『逆に聞くが、お前は人生で何かを羨ましいと思ったことはないのか?』

後輩『ありますよ、もちろん。じゃあ「嫉妬深いですか」に質問変えます』

俺『理由がちゃんとしてたら納得はする』

後輩『好きな食べ物は?』

俺『魚全般だな、DHAのお陰で頭が良くなったと自負してる』

後輩『座右の銘は?』

俺『笑う門には福来る』

後輩『えー、診断結果が出ました。先輩のタイプは「とても頼りになる先輩」です。これからも後輩に優しくしてあげましょう』

俺『不満があるなら聞こうか』

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魅力

後輩『わたしの魅力って何だと思いますか?』

俺『よく食べる所、よく寝るところ、よくしゃべる所、だな』

後輩『ただの健康優良児じゃないですか』

俺『健康は大切だぞ。大人になっても健康な奴はそういるもんじゃない。誇れ』

後輩『女性としての魅力を聞きたいんですけど』

俺『すごくおもしろいヤツだと思ってる』

後輩『わあーい、ってわたしが喜ぶとでも思ったんですか。もっとあるでしょ。カワイイとか一緒にいると楽しいとか、面白いとか』

俺『最後自分で言ってんじゃねえか。わざとか?』

後輩『べ、べつに嬉しかったとかじゃないんですから! たまたまですから!』

俺『まあいいや、ちゃんと言ったからな。俺の魅力も答えてくれ』

後輩『唯一無二な先輩ってカンジがしてとてもイイです!』

俺『よし、じゃあそんな最高の先輩が明日からもっとビシバシ鍛えてやる』

後輩『えええ、なんでですかあ!』

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キュン

後輩『先輩、わたしをキュンとさせてください』

俺『どうした、突然』

後輩『最近、先輩にそういうのを感じることが無くなったような気がするので、今すぐにでも補給したいんです』

俺『栄養みたいに言うな。まあいい、そうだな、朝はちゃんと食べたか?』

後輩『お母さんかっ! いや、もうちょっとカッコイイ台詞ですよ。先輩らしい』

俺『俺らしい? あ、そうだ。昼メシカレーうどんでいいか?』

後輩『いいけどもっ! カレーうどんでいいけどもっ! おいしいから。けど、もう少しマジメに考えてください』

俺『そういう意味で言ってないんだけどな。んー、最近仕事できるようになってきたよな。見直した』

後輩『あ、そういうの今いいんで』

俺『なんでだよ。せっかく褒めてやったのに。あ、そういや昨日鍋作ったんだが、食材買い過ぎて一人じゃ食べきれないんだよ。手伝ってくれないか?』

後輩『行きます』

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恋敵(ともだち)①

友達「そういえばさ、営業課の○○さん。いい人だよね」

私「急にどうしたの?」

友達「この前ね、ドジって○○さんの資料にコーヒーこぼしちゃって。でもその時、資料よりもわたしのこと心配してくれたの。『◇◇さんは大丈夫? コーヒーありがとうね』って」

私「あー、先輩らしいね」

友達「彼女とか、いるのかな」

私「もしいたら、どうするの?」

友達「ダメもとでアタックするかな。で、脈ありだったら本気で落としにいくつもり」

私「それじゃあ落ちないと思うよ。あの人ね、変人が好きなんだって。飲み会で言ってたの」

友達「ウソ、マジで? でもちょっとアリかも。変わった人って結構好きだし。ねえ、どういう風にアタックしたらいい?」

私「うーん、私なら真正面からは攻めないかな。まず仕事ができることをアピールするの。あの人、仕事できる人の方が好きそうでしょ」

友達「わかるー」

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恋敵(ともだち)②

私「まずは部下として認めさせないとね。攻めるのはそれから」

友達「でもなあ、わたし容量良くないし。○○さんも本当は、ドジな女って思ってるのかも」

私「あの人、嘘だけはつかないよ。嫌なら嫌ってはっきり言うし。ていうかさ、気づいてコーヒー淹れてくれる人を嫌う人なんていないと思う」

友達「それは別の人に頼まれたから。○○さんの分は勝手に淹れちゃっただけなの」

私「喜んでくれたならそれでいいじゃん。落としたのは事故なんだから」

友達「うん、ありがと。ていうか、これをきっかけに話しかけてみるとかどう?『コーヒーこぼしちゃった◇◇です。覚えてますか?』って」

私「うーん、どうだろ。わりと覚えてないと思うけどなあ。逆にさ、言われたら結構イヤじゃない?」

友達「嫌嫌! ぜったいイヤ!」

私「じゃあ、もっといい理由を考えようよ」

友達「『あーちゃんの友達です』とか?」

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恋敵(ともだち)③

私「え、わたしの?」

友達「だってあーちゃん、○○さんと仲いいでしょ。紹介してよ」

私「それはちょっと難しいよ」

友達「えー、なんで? 応援してくれないの?」

私「応援したいよ、二人とも。けどそれは」

友達「フェアじゃないって言いたいの?」

私「うん、じつは他にもけっこういるんだ。紹介してほしいって人」

友達「そんなのいいじゃん、だってわたしたち友達でしょ?」

私「友達だからだよ。友達だったら、そういうことはしてほしくない」

友達「あーちゃんはわたしの力になってくれないの?」

私「先輩を裏切るみたいなことはしたくないから」

友達「わたしより○○さんの方が大事なんだ」

私「大事っていうか、幸せになってほしいの。◇◇ちゃんが良いってあの人が言ったら、その時はわたしも二人が幸せになれるように応援するから」

友達「それってさ、彼女としてどうなの?」

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恋敵(ともだち)④

私「知ってたの? いつから?」

友達「だいぶ前。二人でお昼食べに行ってるとこたまたま見ちゃってさ。手も繋いでなかったけど、空気がそんな感じだった」

私「知ってたのになんでわたしに相談してきたの?」

友達「好きだったのは本当だから。それにあの人と付き合えるってどんな子か気になったの」

私「最初に会ったときからそれが目的だったってこと?」

友達「最初はね、でも途中から変わった。社内恋愛ってさ、あんまりうまくいかないって言うでしょ? 手をつなぐのだって誰かに見られたら終わりだし、わたしみたいに勘のいい女(ひと)はすぐ気づくから。そんな危険な恋愛、友達にさせたくないなんて当たり前じゃん」

私「それで突然あんなこと」

友達「やめた方がいいってわたしが言っても、聞かないでしょ? だったらどれだけ本気か確かめようって思ったの。わたし、先輩にも幸せになってほしいから」

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恋敵(ともだち)⑤

私「そうだったんだ」

友達「軽蔑した?」

私「ううん、理由が聞けてよかったなって。ありがとね」

友達「あーちゃんほんと変わってるよね。普通は許さないよ? 彼女がこんなこと言われたら」

私「そうかもね。だけど、自分だけが彼氏を幸せにできるなんてそんなのわかんないでしょ」

友達「彼女だったらそう思うんじゃないの?」

私「幸せにはなってほしいけど、わたしが何かやって先輩を幸せにできるとは思ってないよ。先輩とならわたしが幸せになれると思ったから」

友達「自分のため?」

私「うん、全部そう。それに、付き合う前に言われたんだ。『遠慮だけはするな』って」

友達「どういう意味?」

私「自分を大切にしろってことだと思うよ。相手のために我慢とかするなって感じかな」

友達「相談に乗ってくれたのはどうして?」

私「『友達は大事にしろ』って、まえにあの人が言ってたんだ」

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最終話 オカシな共通点

後輩『先輩、次の休みにデートに行きます』

俺『おー、お土産よろしく』

後輩『デパートじゃないです。デートです』

俺『字面が戦場に行く前の兵士みたいなんだが』

後輩『「キミも一緒に乗らないか? このビックウェーブに」って言った方がよかったですか』

俺『胡散臭いことこの上ないな』

後輩『今なら食事代と指名料込みで1校長でいいです』

俺『え、金とるの?』

後輩『安心してください。指名料はタダですから』

俺『素直に奢ってほしいと言ってくれ。でも大丈夫か? 見られたら困るんだろ』

後輩『その時は堂々と言います。私達なにも悪いことしてませんから』

俺『逞しいな。じゃあもうメールで会話するのはやめるのか』

後輩『何言ってんですか。続けますよ』

え、なんで。

後輩「だって私達、相手の目を見て話すのじつは苦手同士じゃないですか」

俺『そうだった』

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KC 2021-11-10 19:15:49

テスト投稿


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どどりあ 2021-11-11 06:52:32

四コマ漫画のような面白さがある。


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あきカン 2021-11-10 23:26:00

僕の涙を返してください。


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あきカン 2021-11-11 08:29:49

(*´▽`*)


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あきカン 2021-12-25 23:25:28

人類みなサンタ!


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