爆弾低血圧JK
目覚まし時計が鳴り響いて、私の頭を音で殴る。
「う……うぐ、ぐ……」
寝起きが悪い私にこれは拷問だ。
私は呻きながら手を伸ばし、布団の中から時計をバシッと叩く。
瞬間、時計がボン、と爆発した。
……またやってしまった。
低血圧の時の私は触れたものを爆破してしまう。
だからスマホのある今でも、安っちい目覚まし時計なんか使っている。
「買い直さなきゃ……」
とりあえず私は二度寝をキメた。ぐう。
それから1時間くらいして、私はようやく布団から出た。
ただ、今日はなんだか調子が悪い。
頭が重いし足もなんか重い。
そして私が部屋のドアノブに触れると、ノブはボンと爆発した。
……こういう調子の悪さってある?
とりあえず私はドアも爆破して部屋から出た。
この感じだと、今日の私は触ったもの全てを爆破してしまうのかもしれない。
……学校へ行くまでに、私は何を、どれだけ爆破してしまうのだろうか……
とりあえずリビングに降りてきた私は、テーブルの上の朝食を口にすることにした。
……ただ、私がフォークに触れると、やはりボンと爆裂した。
飛んできた先っちょをサッと避ける。
壁に突き立ったフォークの先は、ビィィンと震えていた。
あぁ、壁紙に甚大なダメージだ…
仕方なく、私はいわゆる犬食いで朝ごはんをお腹に入れた。
ビジュアルの詳細については、乙女の尊厳のために割愛させていただく。もぐもぐ。
ご飯を食べ終えた私は、しかしこりゃ困ったぞと思った。
学校へ行こうにも制服を着れそうにない。
カバンも持てなければ自転車にも乗れないだろう。
私の通う高校はチャリで15分もかかるので、歩いて行くのはごめんだ。
……よし決めた、今日はサボろう。
私はうんと頷く。
二度寝は布団を爆破しかねないので、お散歩でもしてこよう。
私はパジャマ姿のままサンダルを履いて、玄関のドアを爆破して外に出た。
いつもの通学路とは逆の道を行く。
テクテクと歩いていく分には何を爆破することもない。
完全に手ぶらではあったけれど、気ままに好きな方へ散歩するというのは少しだけワクワクした。
今でも頭は重たいままだったけど。
「歩いてるうちに気分が良くなるといいけどなぁ……」
--博士。ターゲットを発見しましたが、どうしましょうか。
--強引な手段でも構わん、確保しろ。
--了解。
突然、私の前に謎の集団が立ちはだかった。
「えっ」
「……羽瀬 ちる子だな?」
白いマントに白鳥の仮面を身につけた人が私の名前を呼び、横に控える白い全身タイツの集団に合図をする。
直後、白タイツたちは「ギーッ!」と叫んで私に襲いかかってきた!
「うわぁっ!?」
咄嗟に私が手を出すと、白タイツがボンと爆破され、裸のオッサンが悲鳴を上げた。
「キャーッ!」
いや叫びたいのはこっちだっつーの。
その後も、私は遅い来る白タイツたちを片っ端から爆破していった。
しかし、何人のオッサンを全裸にしても、彼らの勢いは止まらない。
遂に私は彼らに周りを囲まれてしまった。
息を切らす私に、白タイツとオッサンたちがジリジリと近づいてくる。
「観念しろ、羽瀬 ちる子……!」
遠くで白鳥仮面が言う。
万事休すか……!
「そこまでよ!」
その時、私の頭上から叫びとともに何者かが降ってきた。
その瞬間、辺りには激しい風が吹いた。
「「うわあああっ!!」」
白タイツとオッサンたちが乱れ舞う。
私も足を掬われて「わわっ!?」と倒れかかったけど、そこに飛んできた何者かが、私を抱き抱えてその場から飛び去る。
「あれはっ……高気圧ガール!」
白鳥仮面の叫び声がした。
私がパッと顔を上げると、そばには怪盗のようなマスクをつけた女の人の顔がある。
チラリと覗いた目は、綺麗なブルーの瞳だった。
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