記憶を消してまた君に会いに行く

「裕太! 今日のデート楽しかったね!」
「そうだな。桃香!」

俺と桃香は、恋人同士だ。

「じゃーな!」
「ばいばい!」

俺は、別れを告げて帰ることにした。

 桃香と別れてしばらくしたところで前から来ている車に気づかず。俺は、引かれてしまった。

「う、ううぅん......」と、目を覚ますと病院に居た。
 
 何で俺は、病院に居るのだろうか......。全く思い出せない。

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「裕太!」と、見知らぬ女性が泣きながら抱きついて来た。
「あの......どちら様ですか?」

見知らぬ女性は、涙を流しながら「嘘だよね。裕太。桃香だ......よ......?」

声が震えている。

 桃香。聞いたことのある名前だ。どうやら俺は、事故で記憶を失ってしまったらしい......。

 これは、俺が記憶を取り戻す物語である!

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 退院して家に帰ると、桃香さんからいろんな事を教えてもらった。

 桃香さんは、俺の恋人であること。俺は、大学生である事などなど。

「桃香さん」
「だから、桃香でいいよ! 前までそうやって呼んでたんだよ?」
「桃香」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」

 桃香も、すぐにこの事実を受け止めてくれてとても助かった。

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「裕太? 事故にあったんだってな。大丈夫か?」と、大学に着くと1人の男子大学生が声をかけてくる。
「どちら様......ですか......?」と、裕太は疑問そうに聞く。
「あー。ほんとだったんだな。記憶喪失......。俺は、お前の同じ学科で友達の恭平だ! まぁ、2回目のよろしくだな! まぁ、記憶戻すまでは一緒にいてやるよ」

 とても頼りになりそうだ。

「よろしくお願いします」

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 恭平と一緒に食堂に来た。

 現在は、12時だ。

「あー。くっそ! 空いてる席ないな。まぁ、お昼時だから仕方ないっちゃ仕方ないけど」

俺は、辺りを見渡す。やはり、どこの席にも人が座っている。

「あ、あそこの席俺の知り合いが座ってる! 裕太! あそこの席に行くぞ」と、恭平は俺の手を掴んで知り合いのいる席に向かった。

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「へぇ......そんなドラマみたいなこと起こるんだな」と、恭平の友達は俺の背中を叩く。
 
 恭平の友達は、一人でご飯を食べていたらしい。

「えーと、恭平の友達さん?」
「ん? あー。俺の名前は、涼太! よろしくな耕平!」と、もう一度背中を叩く。
「そんなに、七味入れてて辛くないんですか?」

涼太の食べていた物は、うどんだった。その中には、七味の瓶半分ほどの量の七味が入っていた。

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「あー。食った食ったぁ〜」と、涼太はお腹を叩きながら言う。
「お前さ、ほんとにあんなに七味入れて辛くなかったのか?」と、恭平は心配しながら言う。

 そう思うのも無理はない。実際、自分が食べていたらひと口が限界だろう......。

「そーいえば、お前。裕太さ」と、話は変わり俺に恭平は話しかける。
「ん?」
「お前さ......彼女さんと別れたりしなくていいのか?」

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「は? なんでだ......?」
「いや、だってさ。お前彼女のことなんも覚えてないんだろ......?」
「ーーー」
「だよな。だったらさ、付き合ってたって彼女を不幸にするんじゃ無いのか?」

確かにそうだ。俺は、このまま記憶を戻さずに 桃香を不幸にしてしまうかもしれない。だったら、尚更別れた方が桃香の為になる。

「そうだけど、別れたく無い」

気づけば、そう言っていた。

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 きっと、今の俺の意思でそれを言ったのではなく昔の頃の強い意思でそう言ったのだろう。

「お前ほんとにそれでいいのかよ?」

駄目だとわかっている。でも、ほんとの俺がそう思ってるんだ。

「だったらさ、俺が記憶戻すまでの間は別れる。それでどうだ?」

このやり方が1番合理的と俺は、思った。

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「裕太? どうしたの? いきなり呼び出して?」と、桃香は不思議そうに言う。
「言いたいことがあるんだ......俺と......」

『記憶がなるまで、別れて欲しい』ただ、その一言だけなのに、なかなか言えない。

「どうしたの?」

俺は、勇気を振り絞って「記憶が戻るまでの間別れて欲しい」と、俺は言うと桃香に背中を見せて去る。

 そう、これは俺が記憶を戻し桃香に告白する話である。

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LINEには、ひとつの通知が来ていた。

「別れるっていうことには、触れない。でも、ひとつだけ触れててかな?」
「うん」
「裕太は、気持ちが整理できてないだけだよね? ほら、私のこと嫌いになったとか」
「絶対にない。もう1人の俺と話し合った結果決めた事なんだ」
「友達ではいてくれる?」
「もちろんいや、俺のほう友達でいて欲しい」
「うん。よろしくねー!」
「こちらこそ」

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 その言葉には、裏があるように感じた。

「はぁ〜......」と、俺は床に倒れる。

「お前は、一体何モンなんだ?」と、俺は自分に問いかける。

 もちろん、返事なんて返って来ない。記憶って何をすれば返ってくるんだろうか。あーーーーーー。明日恭平に聞くか!

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「何すれば戻るって......そんなの、わかるはずねーだろ」

まぁ、当然の返事が返ってくる。

「だよなー」
「病院からは、何も言われなかったのか?」
「言われた。日が経てば、治るって」
「じゃー。その時まで待て」
「それの時まで待ってって......それじゃ、いつになるか分からないじゃん。本当に戻ってくる保証もないし」
「わかったわかった。俺も考えてみるからお前も考えろ。いいな?」

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 俺は、記憶喪失の治し方をネットで調べるが。どれもこれも、ストレスでのことばかりだ。

 治す薬があるという記事もある。どーすればいいんだろうな......。

「ん?」

LINEが来ている。恭平か? 両親からだった。実際両親のことも忘れているため、本当にそうか分からないが......。

「耕平大丈夫か? まあ、大丈夫なはずねーな。近々行く」

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 すみません。耕平ではなく裕太です。
「裕太大丈夫か? まぁ、大丈夫なはずねーな。近々行く」です。誠にすみません。

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 ピーンポーンとインターホンが鳴る。両親だ。

「裕太? ほんとに覚えてないのか?」
「うん。お父さん」
「お父さんなんて、よせよ! お前は、俺のことをお父さんなんて呼びやしなかったしさ。俺のことを親父って呼んでたんだぞ?」
「そーだったんだ。親父」
「ちなみに、私のことを母さんって呼んでたのよ」
「ごめん、全く覚えてないや」

両親は、それを笑って誤魔化した。仕方がないことだけど。

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 両親は、帰るようだ。

「本当にいいのか? お前ひとりで生きていけるか?」
「あ、あ。大丈夫だよ」
「ほんと? 無理しちゃだめよ」
「大丈夫だって。俺は、俺の記憶を取り戻すまでは無理するかもだけど......」

記憶を戻すためには、どんなことでも無理してでもやってやる。そう俺は、心の中で誓った。

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「なぁ、恭平」
「ん? どうしたんだ? 裕太?」
「俺ってさどうんな感じだったんだ?」
「そーだなぁ……まぁ、少しお調子モンだったな……」
「えーー。まじか。他には?」
「他にはかぁ……まぁ、面白いやつだったな。少しバカで、何でもかんでも真面目にやるやつだったな。桃香さんに告白するときもあれは、すごかったなぁ」
「え? どんな感じだったんだ?」

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「あれは冬だったな……。まず、お前と桃香さんが出会ったきっかけっていうのが、コンビニでお前がバイトでレジ打ちしている時に、桃香さんと出会ったんだっけな。なんだ? その時お前は、俺に「これって運命ってやつだよな?」なんて、言ってきたっけな。俺は、初めはそうだな程度しか思ってなかった。でも、桃香さんは次の日も次の日もお前がレジ打ちをしている時間に来たんだよ」

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「俺と……桃香は何か話してたのか?」

「ん?知らねーよそんなこと。しょーもないことだろ?」

「違うって。話し始めるきっかけだよ。」

「それなら、あれだな。お前のことだから運命の赤い糸がビリビリだーってな感じで一生懸命ネタ準備してたんだろうな」

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「俺ってそんな少し抜けてる人だったのか……もっと、頭が良い人だと思ってた……」

 少し、昔の自分と会いたいな。まぁ、俺という存在は記憶が戻った時点でなくなるから無理な話だが……。

「まぁ、頭はそこそこ良かったぞ。俺とお前が出会ったのは、お前が頭良くて教えてもらったのがきっかけだからな」

 はぁ……、なんも思い出せないな。

「あ、お前と桃香さんが出会ったコンビニ今度行くか?」

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「いや、それは……な?」
「なんでだよ? 何か思い出すんじゃねぇのか? そこのコンビニ行けばよ」

 たしかに、そうだ。でも、でも何故か行く気にはなれない。

「でもなぁ〜〜…………」
「いいじゃねぇかよ! そこに行くと死んじまうとかかぁ?」
「そんなんじゃねぇよ……ただ、なんか行く気にならないっつーかよ……」
「行ってみて損はねぇと思うぞ? なんなら、俺も着いて行こうか?」

 

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 困ったなぁ〜〜、完全に断れない雰囲気だ。まぁ、行くだけ行くとしよう。

「わかったよ、じゃー今週の土曜に連れてってくれ」
「今じゃなくていいのか?」
「え?」
「いや、だってここからちけーしよ」
「いやなぁ……ちょっと心の準備をさせて欲しいからさ………」
「まぁ、わかったよ。じゃー、今週の土曜な!」

こうして俺と恭平は、約束をした。

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 コンビニは、家からかなり近いところだった。まぁ、遠かったらそれはそれで、バイトの際に不便だから当たり前か。

「裕太、入らないのか?」
「いや、なぁ? なんっつーかさ、めちゃくちゃ緊張して……さ」

 コンビニに近づいてから、かなり心拍数が速くなりドクンドクンと鳴っているのがよくわかる。

「じゃー、俺先入ってるぞ?」
「っ! ちょっ!」と、俺は手を伸ばすが恭平は中に入ってしまって遅かった。

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 はぁ………勇気を絞るんだ俺! たかが、コンビニの中に入るだけだ!

 俺は、そう自分に言い聞かせて勢いよくコンビニの中に入る。

「いらっしゃいませー!」と、男性店員が一礼する。

 俺は、恭平のいる本のコーナーへ行こうとすると。

「って、お前、裕太か?」と、先程の店員に止められた。

 どうやら、俺のことを知っているらしい。

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「いやぁ〜、また背が伸びたな!」と、店員は頭を撫でる。
「え? そ、そうですか〜」

 怖い人ではなさそうだ。どうやら、可愛がられてたのかな。
 
 ちなみに、恭平はというと……週刊少年漫画を立ち読みしている。

「あの……実は、俺記憶がないんです……」
「は? どういうことだ?」

 店員は、先ほどまでの優しそうな表情から真剣な表情に変わる。

 俺は、記憶が無くなった経緯などを話す。

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「そんな、漫画みたいなこと起こるもんか?」
「実際に自分が起こっているので………そんなことより、俺のこと少しでも知っていたら教えてください。俺というものをもっと知りたいんです」

店員は、俺の首を脇で締める。

「このこの、格好つけやがって! 何が知りたいんだよ? お前は、お前だろ?」

 何を言っているのか理解ができなかった。「お前はお前」? そんなの当たり前だろ?

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「言っていることが理解できないんですが……」
「あん? だ・か・ら!! 今のお前が本当のお前なんだよ。細かいこと考えてないで、今のお前らしく生きろってことだよ。そうすれば、今のお前に嫉妬していつかお前という存在について、知ることのできる時が来るさ」

 何を言ってるのかさっぱりわからない。今の俺でいればいつか俺という存在について知ることのできる時がくるか……。

「わからないけどわかりました!」

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「ん? 来たか」
「待たせた、ごめん 」
「いいってことよ! それで、なんかわかったか?」
「うんうん、なんもわかんないや」
「そっか……」

 すると、恭平は俺に週間少年誌を押し付ける。

「ん?」
「ん? じゃねぇーよ。こんだけ待たせたんだし、このくらいはしてもらわねぇーと」

 なんつー、やろうだ。まぁ、恭平のおかげだな。仕方ない。

「はぁ、わかったよ」

 

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 家に帰りスマホを見るとひとつの通知が来ていた。

 桃香からだ。

「明日、一緒にお出かけしよ!」

 少し、戸惑いながらも俺は、「いいよー」と返事をした。

 今日といい、近いうちに記憶が戻りそうな感じがする。これは、桃香と出かけることで記憶を戻すことができるかもしれない。

「じゃぁ、明日! 駅の前の時計台集合ね!」

 服は、どうしようか……。

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 午前9時50分。俺は、約束の時間より10分ほど早く着いた。

 やはり、ここは目印になりやすいだけあって、色々な人が時計台で待ち合わせをしていた。

 俺は、とりあえず時計台の周りを見てみるが、桃香らしい姿は見渡らない。

「まぁ、まだ来てるはずないか……」
「もう、来てるよ!」
「うわっ!」
「裕太! 久しぶり……!」
「久しぶり、えーと、2週間ぶりぐらいか?」
「うん、そうだね!」

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「今日、一緒にお出かけする理由は、少しでも記憶を戻す手伝いが出来たらいいなあ〜って、思ってさ……」と、桃香は少し顔を赤くしながら言う。

 なんて、俺は幸せ者なんだろうか……一刻も早く記憶を取り戻さなければ……。

「だからさ、私たちが一番思い出深いあそこに行こ!!」
「あそこ??」
「そう、あそこ!」
「あそこってどこだよ!?」
「いいから!!」

 桃香は、俺の手を引っ張り歩きだした。

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 あそこというのは、水族館だった。少し、人気のない森の中に水族館はあった。

 どうやら、俺たちはよくここに来ていたらしい。

「確かに……懐かしいな……」

 気づいたら、そうボソッと言っていた。何が懐かしいのか? 俺には、さっぱりわからなかった。でも、なんだか懐かしい。

 桃香は、不審そうにこちらを向く。

「いや、なんっつーか、懐かしいって感じてさ……」

 桃香はクスッと笑った。

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 チケットを買い水族館へと、入場する。

「いやー、ペンギンはやっぱかわいいなぁ〜」

 桃香は、クスッと笑う。

「ん? どうしたんだ??」
「いや、記憶無くしても、そういうところは変わらないんだなぁ〜ってさ」
「え? そうなのか? まぁ、いいや。うん! ペンギンはやっぱりかわいい!!」
「ペンギンショー行く?」
「あるなら、行きたい!!」
「じゃぁ、行こ!」

 桃香は、俺の手を持って歩いた。

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 まだまだ、ペンギンショーまでは時間があるらしく水族館を見回ることにした。

「あれが、ジンベイザメ……」
「うわっ! でっか!!」
「ははは、初めて見た時と同じ反応」
「まじか、同じ反応してるんだな……そう言われてみると、確かになんかこんな感じの雰囲気感じたことあるなぁ〜」

 桃香の方を向くと、天使か? と思うほどの笑顔だった。

「ん〜?」
「いや、かわいいって思って……」

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「えっ!! この場面でそれは、ずるいって……(小声)」で桃香は呟く。
「ごめん! 今の聞こえなかったからもう一度お願い!!」

 桃香は何と言っていたのだろうか。

「うんうん、何でもない」
「そ、そうか……」

 俺は、少し赤くした桃香の方を見て察した。多分、恥ずかしいことを言ったのだろうと。

「あ、そんなことより、もうすぐペンギンショーだよ!!」
「あ、ほんとだ。よし! 行くか!!」

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 何故ペンギンってこんなにも可愛いのだろうか。特にあのペタペタと足を動かしているペンギンだ。

「あのペンギンは、ペンって言うんだよ」

 桃香は、俺の視線を気にして言ったのだろう。

「そうなんだ。ペンギンってなんであんなに可愛いんだろうね……」

 あ、なんかこんな感じのこと昔言ったことがあった気がする。

「なんか、ずっと、そのままの裕太でいいかも……」

 その言葉で俺は少し思考が止まった

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 彼女からの言葉は、とても意外だった。今の俺でいいだと……俺も、ずっと彼女と……桃香と一緒にいたい。でも……。

「ごめんよ……それは、できないや。やっぱり浮気なんて……まぁ、浮気の相手が恋人の自分っていうのもおかしいけど……」
「何、間に受けてるの!? 嘘だよ嘘……」と、桃香は馬鹿にして笑う。

 あー、こうやっていられるのもいつまでかわからないな。

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 いつか自分が消えるんだと、少し切ないと思いながら、ペンギンショーを見た。

 その後、水族館の中にあるレストランに来た。このレストランは、水中にいる生き物を題材にした食べ物が多く見られた。
  
 俺は、『ペンギンの南極カレー』というものを頼んだ。桃香はというと、『ジンベエザ麺』というラーメンを頼んだ。とても、名前にインパクトがありつい、メニュー表を見た時に笑ってしまった。

 

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 料理が届くまでの間、雑談をしていた。
 
「いやぁ〜ほんと、ペンギンは癒されるなぁ〜。特にあの、ペタペタ歩く感じとか! マジで最高だなぁ〜」

 クスッと桃香は笑った後、ジーとこっちを向く。

「っ! なんだよ?」
「うんうん、別にー、なんか、ほんとに裕太と変わらないなーってさ」
「そ、そうなのか……?」
「うん、少し、異性と喋ってる時に目線が下向く感じとか……」
「げっ! バレてましたか……」

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 まず、最初に来たのは俺の頼んだカレーだった。見た目は、青く名前の通り南極をイメージしている感じだった。

 次に来たのは、桃香のジンベエザ麺だった。思い描いていたイメージとは少し、ただナルトにジンベエザメがプリントされているだけだった。

「普通ーーって、思ったでしょ?」
「ま、まぁ、普通のラーメンでしょ?」
「うんうん、案外おいしいよ! あ、そっちのカレーは?」
「まぁまぁおいしいよ」

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 何故か、桃香はこっちをじーっと見ている。

 俺はというと、絶賛カレーを食べている。湯気が出ていると思ったらご飯だけでカレーは、とても冷たかった。南極を表しているのだと思うけどちょっとなぁー。

「ん? どうした?」
「そっち、美味しそうだなぁーって……」
「え? うん?」
「美味しそうだなぁー」
「あ、あ! わかった。じゃぁ、一口だけ交換なら……」
「うんうん!」

 桃香は嬉しそうだった。

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 あ、関節キスと思った時にはもう遅く、ご飯を食べ終わった頃だった。

「ん? 顔になんかついてる?」
「いや、なんでもない……」
「嘘だぁ〜〜!」と、桃香は顔を近づけて来た。
「ぎくッ……いや、関節キスしちゃったなぁ〜ってさ……」

 桃香は、カァーーっと顔を赤くした後に。

「そう言われてみれば……」とボソッと言う。

「そんなことより、次どこ行く?」
「あ、話逸らした」
「ぎくッ!」

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 その日は結局、服屋で時間を潰した。

 自分には、服のセンスやそもそも服自体にそこまで興味がないということがよく分かってしまった。これからは、服のこともよく知るようにしよう。

 家に帰りベットに仰向けで寄りかかり。

 はぁ……あの反応は、昔の俺って結構服の知識あったんだなぁーー。と思いながらその日は幕を閉じた。

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 その日の夜俺はある夢を見たーー。

「あのさ、俺と、ライン交換してください!!」と裕太は頭を下げる。
「えっ!! いきなり何ですか!?」
「最近よく、ここのコンビニ来てますし、お願いします!!」

 裕太は、顔をひとりの女性に近づける。

「理由になってませんよ!! 本当なんなんですか!?」
「お願いします、って、ちょっとー! 待ってください!」

 ひとりの女性は自動ドアを潜り出ていった。

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 はぁ……バイト終わったぁ。今晩はどうしようかな? などと考えながら、裕太は従業員専用のドアから出ると、そこにはあの、ひとりの女性がいた。

 裕太は、目を大きく開けて驚く。

「遅いですよ……」
「っ!?」
「っ!? じゃないですよ! それで、ラインですね」
「えっ! はいそうです」

 え? 一体どうゆうことだ……。もしかして、さっきの「待ってください!」で待ってたとかか?

「早く!」

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 裕太は、慌てながらスマホを出しラインのQRコードを見せる。

「よし! これで、交換完了!」

 ん? ……桃香って言うのか……。

「桃香さん、なんで交換してくれたんですか?」
「いきなり、名前ですか……裕太くん」
「桃香さんこそ!」
「「ハハハ」」と、2人は顔を合わして笑う。
「あんなに、人前で言われたら断れないでしょ……ずるいよぉ」
「あ、ほんとにごめん!」
「いいよ、いいよ!」

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「それで、どうしてライン交換してなんて言ったんですか?」
「うーんと、それはだなぁ………」

 言えない、君が好きだからなんて。言ったら絶対、ブロックされてしまう……。あー、でも、嘘つくのもなぁ……ぁああー! 当たって砕けろだ!

「き、き、君が好きだからだよ……」

 言ってしまったぁああー。きききき嫌われたか……。

 桃香を、チラリと見るとクスッと笑っていた。

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「え?」と裕太は、目を大きく開けながら驚く。
「んー?」
「気持ち悪とか、そういうの思わないんですか!?」
「えー、嬉しいじゃん、そんなに真剣な顔しながら言われると」

 桃香はモジモジと体を動かせながら。

「私、そういう真っ直ぐな人好きだよ……あ、でも、君が思っている好きとは、違うからね!」
「お、おう……」

 一瞬ドキッとした気持ちを返してくれ!!

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 その後、ごはんは? と聞かれたため。まだと答えると、なんと桃香さんの家でご馳走してくれるようだ。なんという、優しい人なんだ……。

 桃香さんの家は、コンビニの近くの駅から2つ駅を超えたところにあるようだ。少し、遠い気もするが桃香さんの手料理? が食べれるなら……安いものだ!

「裕太さんって、私と同じ大学生に見えるけど歳いくつ?」
「俺か? 俺は18の大学1で来月の7月が誕生日だよ」

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 などと、電車でガンゴトンと揺られながら、雑談をしていると2つ目の駅のアナウスが鳴る。

「ここで降りる感じですよね?」
「そうだよ」

 2人は、電車から降りる。

「どこら辺にあるんですか?」
「んー? すぐだよすぐ、駅から徒歩5分のところ!」
「すげぇ、いい物件ですね……」
「でしょー!」
「……」
「……」

 ネタが切れてしまった……どうしようか? あと5分間このまま無言でいいのか!?

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 話のネタを考えている間に、桃香さんの家に着いた。

 元々白だったように見える壁は、今では黄ばんでいるため、かなり古いアパートだった。

「二階だよ」

 桃香さんの背中を向いて階段を登るとかなりギシギシと音を立てていたためとても怖かった。

 桃香さんの家は、玄関のすぐそばにキッチンがあり居間はベットがあるのに2人でも窮屈しなそうな広さだった。

「急いでご飯作るねー」
「お願いします……」

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 桃香さんが、カタカタと音を立てて包丁で材料を切っている間。俺は、居間に座り辺りを見渡していた。

 とても女性の部屋とは思えないほど、家具が少ない。

「お待たせしましたー」

 桃香さんの作った料理は、チャーハンだった。どうりで作るのが早いわけだな。

「「いただきます!」」と、2人は手を合わせて言う。

「うんま!」
「うそばっかり……」
「いやいやマジでおいしいです」

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「美味しいかったぁ〜〜」

 もしかしたら、俺の好きな食べ物がチャーハンになるぐらい美味しかった。

「そう言ってくれると嬉しいなぁ」

 桃香は裕太の食器をトレーに乗せようとしたため。

「いいよ、俺が洗うよ。ご馳走してもらったしさ」と、裕太は止める。

「そう言ってくれると嬉しいな。じゃぁ、お願いします」
「おう!」

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 食器を洗い少し桃香さんの家でゆっくりした後、裕太は家へ帰るために行きと同じ電車に乗った。

 電車の中でスマホをいじっていると、一件のライン通知が来ていた。

『今度、どっか一緒にどこか行きませんか?』
『いいね、じゃぁ水族館とかどうですか?』
『いいね!』

 はぁ〜水族館かぁ〜何年ぶりだろうか。って、やば、降りる駅通り過ぎちゃった!

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 それから、水族館に行き、そこで分かった。彼女は、ジンベエが好きだということ。俺自分自身は、ペンギンが大好きだということ。

 それから、桃香さんとはたくさんお出かけをした。気づけば、敬語でもなくなり気づけば呼び捨てで呼び合っていた。

 そして、俺の周りには恭平と涼太という友達を中心にたくさんの友達ができた。

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 恭平は、少しお調子もんだけどとても人に優しい。涼太とは、友達と言ってもそこまで喋らない。たまに、恭平と一緒にいる時に喋るくらいだ。

 それから、俺と恭平と桃香といる時間が増えて行った。

 そして、更に彼女の好きなものなど色々なことがわかった。彼女は、音楽が好きだとか人によく合わせ来るため、気を遣わないなど。

 そして、時は来た。告白をする日がーー。

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「本当に告白するのか!? 裕太!」
「そうだよ。あと、顔ちけーよ!」

 彼女と会ってざっと1ヶ月と数日。この1ヶ月と数日は、ほんとに濃った。こうやって、一緒にいる友達もできたし。
 彼女のことも、たくさん知れたし。

「じゃぁ、俺は桃香の待ってる駅に行ってくる!」
「おうよ、頑張ってこいよ!」
「おう!」
 
 裕太は、背を向けて走って行った。

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「俺と付き合ってください」
「やっと、言ってくれた……」

 桃香は呆れた顔をする。

「え?」
「いつ、言ってくれるんだろーってね」
「?」
「君と出会ってから、1ヶ月ぐらいかな? 本当に好きな人としか、こんなに長い間遊んだりしないよ」
「ってことは……!!」
「その通りだよ」

 裕太は、ジャンプをしてやったーと喜ぶ。それを、桃香は止めるようにちょっとと焦りながら言った。

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 それから、俺と桃香はたくさんデートをした。いつものように、恭平とも一緒に遊んだ。

『俺はやっぱり、みんなにとって邪魔なんだ……そんなことを思ってしまった。昔の俺らしき人物とその周りにいる人たちは、今の俺と接し方が違った。やっぱり、俺は邪魔なんだ……早く、早く、早く、本当の俺、目を覚ましてくれ……そうしなきゃ、そうしなきゃ、どうして、俺がこんな辛い思いしなきゃいけないんだよ!!』

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 目を覚ますと枕が、涙で濡れていた。

 俺は、眉毛についた涙を指で払った。

「なんで、俺泣いてるんだ?」

 夢の中で何かがあったはずだ。それだけは、覚えている。だけど、何が起こったのか? さっぱり思い出さない。

 一体何があったんだろうか? うーん、さっぱり思い出さない。何だったのだろうか。少し、気分が悪い。念のため、病院に行くとしよう。

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 俺は、交通事故に遭った時に入院した病院に行った。

「うーんとね、検査結果が出ました……」と、ドクターは言う。白髭を生やしているところからして、かなりの腕を持っていそうだ。

 ゴクリと、唾を飲む。多分きっと、悪い話だろう。

「君には、今前の記憶が再生しているね。後、数日といったところだろう……」

 やはりだ、俺にとって悪い話だった。

「これで、やっと生活から支障がなくなりますね」

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「ん? どうしたのですか? やっと、記憶が戻るのですよ?」
「あ、いや……やっぱり記憶を戻したくないって……いや、変ですよね? 分かってます。変なことくらい……」

 そうだ、これでやっと本当の自分になれるんだ……いいことじゃないか。でも……でも……記憶を取り戻したら、"俺"はどこに行ってしまうんだ? 地獄か? 天国か? 一体俺は、どうなってしまうんだ……?

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 結局ドクターからは、「君が行きたいところへ行く」と意味深な事を言われた。

 はぁ……みんなに言うか……。きっと、言えばみんなは喜ぶ。そんなの、当たり前だ。でも、やっぱり言えない……言いたくない。

「なぁ……こんな時お前はどうするんだよ?」と、俺は声を震わせながら自分に問う。

「だよな。やっぱり、みんなに言おう。これで、俺以外がハッピーエンドになるなら……」

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「どうしたんだ? いきなり、ちょっと来てってよ?」
「ちょっとさ……2人には、知っといてほしいことがあってさ……俺実はさ、後数日で記憶が完全に戻るらしい……」
「「え!」」と、2人は大声で驚く。

 桃香は、下唇を噛み涙を堪えている。

 恭平は、やったやった! とめちゃくちゃ喜んでいる。

 やっぱり、そうだよな。そりゃー、喜ぶよな。

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「でもよ、その場合お前ってどうなるんだ? この、お前といた日々ってあいつの記憶に残るのか?」

 多分、きっと残らないだろうーーでも、2人を傷つけるわけにもいかない。

「もちろん、残るって言ってた。ドクターが……」

 嘘をつくしかない。

「ん? 嘘だな?」
「いや、本当だって!」
「そんくらいの嘘、バレバレだわ……」
「ああ、そうだよ。嘘だよ。俺は、俺は、記憶が戻ったら無くなるんだよ」

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「だよな、だったらさその残された時間だけでも、もっと楽しもうぜ! 明日から……いや、今からさ!」
「なに言ってんだよ!! さっき喜んでたじゃん! だから、それでいいじゃん! だからさ、これ以上俺を傷つけないでくれよ……頼むよ……」

 気づくと目からは、涙が垂れていた。

「うんうん、このままいなくなっちゃうほうが、裕太は傷つくと思うよ……」

 そこに、俺を包むように桃香は抱きついた。

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「きっと後で、もっと遊んでおけばよかったーとか後悔すると思うよ。裕太なら、絶対後悔する」
「お前に何がわかるんだよ! 俺のさ……」
「わかるよ、だってこれでも元々、裕太の彼女だし……」
「俺は、友達だしな! 現在進行形で!」と、恭平は更に、俺と桃香を覆うように抱きつく。

「ちょっと、恭平くん、今いいところだっでしょ!?」
「うっせぇーな」

 ほんとに、いい友達を持ったな。もうひとりの俺。

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「それじゃ、裕太。何かしたい事はあるか?」
「うーんと、そうだな……これといって思いつかないな……」

 実際、どうすればいいのだろうか? 何をするのが、俺的に後悔しないで消えることが出来るんだ?

「あ!」
「ん? どうしたの?」「どうしたんだ?」
「やっぱり、2人と一緒に楽しめることなら何でもいいや」
「なんだよ」
「ならさ、遊園地行こ!」
「それだ! それならどうだ? 裕太……」

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 桃香の案に乗ってあれから、2日後に遊園地に来たわけだがーー。

 1番楽しみにウキウキしているのは桃香だった。

「おいおい、そんなにウキウキしてて、子供かよ?」
「恭平くん、黙ってもらえる? なんなら、帰ってもらってもいいんだよ?」
「まぁまぁ、喧嘩はやめろ。それで、何からする?」
「はいはい!」と、桃香は手をピシッと伸ばす。

「あれ!」

 桃香が指を差したのは、ジェットコースターだった。

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「……マジかよ」
「うん、マジだよ」
「いやいや、これじゃぁ、裕太、消える前に消えちゃうぞ? なぁ、裕太」

 なんつっー事いいやがるんだ。この野郎は。

「そうだよ、まぁ、乗ってみるか?」
「ぇええええ!」と、恭平は周りに人がいるにも関わらず、大声で驚く。

 周りは、その声に驚きこっちを、キョロキョロと見る。

「あの、絶叫系大嫌いな裕太が、ジェットコースターを!」

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 ジェットコースターに乗った後、「うぇえええ」と、俺はトイレで盛大に吐いた。

「だから、やめとけって言ったのによ……」
「仕方ないじゃん、あんなに……うぇえええ……いつ消えるか分からないんだから、桃香にいい思いしてもらいたいからさ」
「お前なぁ……ほんとに、裕太なんだな」
「え?」
「だって、裕太もこんな感じに桃香さん第一の人間だったからさ」
「へぇー、そうなのか。さすが俺だな」

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「じゃぁ、次は……コーヒーカップ」
「ぎくッ! あの〜桃香さん? ガチで言ってます?」
「うん」

 恭平が、コソコソと「おい、ほんとに大丈夫か? 無理なら無理って言ってやれよ」

「いや、大丈夫……」

 耐えろよ、俺……。

***

「うぇえええ」

 本日2回目、同じトイレの同じ洋式で盛大に吐いてしまった。

「まじで、お前大丈夫か? 俺から言っとくからよ」
「ああ、頼む」

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