もう魔術の勉強なんてしたくない!

「ちっ!しつこいなぁっ!」
鬱蒼とした森を駆けながら少年ーーアナクは悪態をつく。
ランクA相当の魔獣も出現するこの森では、自身の身の丈に合わない魔獣に遭遇した冒険者が逃げる光景など大して珍しいものではなかった。
アナクもまた冒険者であり、今は絶賛逃走中なのだ。
ただし、アナクを追っているのはランクA相当の魔獣ではない。そもそも、彼にとってランクA相当の魔獣など脅威ではなかった。

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アナクを追っているのは.......紛れもない人間だ。

「くそっ!すばしっこい奴め。おい!ケーヤ!左から回り込め!」
「ベルさん!りょーかいっす!」

ケーヤと呼ばれた茶髪の青年は脚力を魔術で強化し、アナクの前方へ回り込もうとする。

「身体強化か......!だがっ!《大地よ、彼の者を......泥まみれにしろっ!》」

「うぉっ!?」

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「へっ!ざまぁみろ!」

「ちっ......!【大地の支配】かっ!厄介な」

泥沼から抜け出そうと藻掻くケーヤを横目に、ベルは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

「よくもまぁ、あんな適当な詠唱で魔術を使えるもんだ。だが、まだまだだな。《反魔術》!」

その瞬間、ケーヤを嵌めていた泥沼が消滅する。

「ベルさん!助かるっす!《身体強化》!」

ケーヤは脚力を強化し、再びアナクへ迫る。

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