異世界に転生した俺は勇者か魔王か選べるらしい

 トラックに跳ね飛ばされた俺は気づくと真っ白な空間にいた。

 目の前に女の人が現れる。

「私は女神。あなたに選択肢を伝えます」

 選択肢?

「あなたは人々が魔法を使いたい生きている異世界に転生します。そしてあなたは転生する身分を選べます」

 へえ、ありがたいな。
 魔法使い? 剣士? 鍛冶職人?

 迷っていると女神は言った。

「あなたは勇者と魔王どちらに転生したいですか?」

 へ?

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アイコン 三門鉄狼

「よくわからないと思いますので、イメージをお見せします。まずは勇者に転生した場合です」

 女神が手を振る。



「勇者様すてき!」「抱いて!」「結婚して!」

 美女たちを侍らせている俺に、国王が頭を下げている。

「どうか勇者様のお力で我が国をお救いください!」

 女神が言う。

「魔王を倒す運命を担い溢れんばかりの才能を持つあなたに、誰もがひれ伏します」

 なるほど、楽しそうだな。

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「次は魔王に転生した場合です」

 また女神の声。



 玉座に座る俺の前に異形の軍団が整列していた。
 最前列にはそれを統べる四天王がいる。

「魔王陛下に栄光あれ!」

 幹部の一人が叫ぶと、それに合わせて地を震わせるような歓声が轟き渡る。

 女神が言ってくる。

「誰もが平伏し従う凶悪なる魔法により、世界征服を進めるあなたを遮るものは存在しません」

 なるほど、悪くない。

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 白い空間に戻ってきた俺は考える。

 勇者も魔王も楽しそうだ。
 会社と家を往復するだけだった前世よりずっと。

 しかし。
 世界征服を目指す魔王と、その魔王を倒す運命を持つ勇者。

 これ絶対どっちかが死ぬよな?

 俺は女神を見る。
 女神は邪気のない笑みを浮かべている。

 怪しい。

 選択肢を誤るととんでもない地獄が待ち受けている気がする。

 勇者か。
 魔王か。
 はたまた……?

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アイコン 三門鉄狼

「女神様。決めたよ。俺はここに残る」

「へ!?」
女神は何が起きたのか、訳がわからず思わず声を出す。

「俺は女神様とずっとここにいる。争いが嫌いなんだよ。魔王にしろ、勇者にしろ、どっちにしろ戦う感じだろ?俺は戦わない。二度も死んでたまるか」

俺はその場に座り込み、腕を組む。

「その選択をしたのは私が知る限り、あなたが2人目です」
女神は俺に近づき、少し困った顔をしている。

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アイコン どどりあ

 真っ白な空間に豪華な部屋が出現した。

 そこで俺は生活することになった。

 どうやら女神は持久戦のつもりのようだ。

 宮殿での生活は快適だが、女神以外に人がいないことと食事をできない(必要ない)のが不満だった。

 何不自由ないが変化のない生活。

 自分で望んだことだが……。

 俺は女神に聞いてみた。

「俺の前にこの選択をしたのはどんなやつなんだ?」

 女神はそれにこう答えた……。

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アイコン 三門鉄狼

「あなたより3つ年上の美少女ですよ。胸はFカップだそうです」

「今すぐ会わせてくれ」

「前世の職業は引きこもりで、他人と関わるのが苦手だそうです」

「それは……コミュニケーションを取るのが大変そうだな……。でもFカップの美人のお姉様か……。Fカップ……」

「今はお風呂に入っているところのようです」

「よし! 覗きに行こう!」

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アイコン 名前どうしよう

 女神がドン引きした顔になったので俺は慌てて続けた。

「……というのは冗談で、風呂から上がるのを待とう」

 まあ実際のところ、そんな女の子と第一印象が最悪の出会い方をして最初から関係が破綻してしまうと困るしな。

「はい、では上がりましたら彼女を呼びますね――」

 と女神が言っている途中で部屋のドアが開き、バスタオル一枚の美人が入ってくる。

 彼女は俺の姿を見て、凄まじい悲鳴をあげた。

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アイコン 三門鉄狼

美女だけに恥ずかしい思いをさせるわけにはいかない。俺はその場で全裸になった。

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アイコン 勇者ちゃん

「なんなんですかあなたは!」

 俺が答える前に女神が、俺も転生者であることを彼女に伝える。

 すると彼女はさらに叫んだ。

「許せませんっ! 私、勇者になってこの人をぶっ滅ぼしてやります!」

 次の瞬間、俺は光に包まれた。

 そして俺は――魔王として転生してしまったのだ。

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アイコン 三門鉄狼

 魔王として転生した俺は、四天王や魔族の側近に、時に優しく、時に厳しく育てられた。

 そして気づけば俺は成人し、正式に魔王の座についていた。

 父親である先代魔王は引退し長い眠りについた。
 これからは俺が魔族を統べていかなければならない。

 そしてそれと呼応するように――

 勇者率いる人間軍が、魔族領に宣戦布告した。

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アイコン 三門鉄狼

 人間軍は快進撃を続けた。

 魔族の砦を次々と破壊しながら進軍し魔王城に迫った。

 そしてついに、勇者率いる精鋭部隊が俺のいる玉座の間までたどり着く。

「陛下、お逃げください!」

 そんなことを言ってくる腹心たちを廊下へ追い出す。

 これでいいんだ。

 扉の外から勇者の声がする。女神の館で会ったあの女性だ。

「魔王、覚悟!」

 俺は彼女を迎えるためにある準備をした。

 それは……

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アイコン 三門鉄狼

 勇者は玉座の間に飛び込み、俺の姿を見て悲鳴を上げた。

「なんで全裸なんですか!」

 そう、俺は彼女を迎えるために服を脱いだのだ。
 彼女との初遭遇と同じように。

「俺は争いが嫌いなんだ。だからあの空間に残っていた。あんたたちが少ない犠牲でここまで来れたのも、俺が部下になるべく戦わないで逃げるよう指示していたからだ。そして戦わない意思を示すために俺は服を脱いだ」

 さあ、勇者はどう答える?

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アイコン 三門鉄狼

「ばかじゃないですか!」

 勇者は声をあげて剣を振り下ろしてきた。
 危ねえな!

「私はあなたに裸を見せられたから、あなたを滅ぼすために勇者になったんですよ。いまさらそんな考えを聞いたからって止めるわけないでしょう」

 たしかに!

 いや、だからって無防備な人間をこんなためらいなく攻撃するか?
 
 あ、俺今人間じゃなくて魔王だった。

 マズいな。
 どうやったら彼女を止められる?

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アイコン 三門鉄狼

「……仕方ない! スライムよ、やれ!」

 次の瞬間、天井から巨大なスライムが落下してきて、勇者を包み込んだ。

 そしてスライムは、勇者が装備しているすべての防具を溶解してしまった。

「――きゃああああっ!!」

 生まれたままの姿になった勇者は、仲間たちに視姦されながら、絶叫する。

 勇者といえども、中身は前世の記憶が残っている若い女だ。こうなってしまえば、戦いどころではあるまい。

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アイコン 名前どうしよう

あれから10年。
勇者との戦いは終わった。

俺はというと。
俺は魔王城で勇者と暮らしている。

10年前のあの時、裸同士で戦うこともできたかもしれない。でも俺にはできなかった。俺には勇者(現妻)の肩にマントをかけ、謝ることしかできなかった。
でもそれが功を奏して戦いは終わった。

魔王城での穏やかな日々。子宝にも恵まれた。

そして、俺は今日も魔王業に勤しむ。
さて、今日はどの街を滅ぼそうかな!

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アイコン どどりあ

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