後継者がほしい

俺は、猪狩響也35歳殺し屋を生業としている。今まで数多くの裏社会の人間を暗殺してきた俺であるが、最近悩みがある。それは、後継者を考えていかないといけないというところである。年齢的にはまだ早いかもしれないが、今後のことを考えると今から行動していても遅くはないと考えていた。しかし、俺には後継者になってくれそうな人間もいなければ、子供もいない。俺は思った。今から、彼女を作って、その彼女に後継者を産んでもらおうと……
まずは、彼女をつくることから行動を開始した。

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「どうして今まで彼女ができなかったか、考えたことある?」
 いつの間にか俺の後ろに立っていた女が呆れたように聞いた。ごく一般的なオフィス勤めの女性のような見た目をしているが、俺に気づかずに背後に距離を詰めていた彼女もまた、殺し屋である。
 コードネームは茜。それ以外は知らない。

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自営業で後継者問題を抱える俺とは違い、もっと大きくてしっかりと管理された組織で働いている。彼女たちにとって俺の稼業は、潰そうと思えば一瞬で潰せる弱小ビジネスに過ぎない。だが、どこともしがらみがなく人を殺せる俺の存在は、使い勝手がいいらしい。ここ数年は茜を通して、組織からの依頼を受け、組織の手を汚さずに人を暗殺したい際に便利に使われる。
 大きな組織は大きな組織で色んな所に気を使わなくてはいけないので、優秀なエージェントを揃えているとはいえ、いつでも簡単に人を殺せるわけではないのである。

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