堀 真潮
窓際一番後ろの席
窓際一番後ろの席
# ホラー
堀 真潮
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窓際の一番後ろの席、そこにカヤノさんが座っている。
先月、突然亡くなったカヤノさんだ。
元々持病があったのだと、その時初めて知った。
カヤノさんは、生前の姿そのままで花の飾られた机に静かに座っている。
本当は生きているんじゃないかと思う事もあるけれど、彼女の横顔を透かして揺れるカーテンが見えたりすると「ああ、やっぱり死んでるんだな」と思う。
退屈な午後の授業、眠りを誘う先生の声を聴きながら、廊下側二列目一番後ろの席から、僕はカヤノさんを眺める。
カヤノさんが現れるのは授業中だけ。見えているのは僕だけらしい。
らしいというのは、見えていない振りをしている人がいるかも知れないからだ。
僕と同じように。
そして、カヤノさんは、ある人をじっと見ている。
窓際から二列目、前から二番目の席。
口元に微かな笑みを浮かべて、そこに座る人の背中をずっと見つめている。
船の娘
船の娘
# ショート×2
堀 真潮
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3
私は船で生まれた。
両親は、小さな宇宙船で他の星を回って、地球で仕入れた細々とした物を売る星間行商人で、宇宙船が私の家だった。
幼い頃の私は、この生活が嫌ではなかった。
いろいろな星を巡って珍しい物を見るのが楽しかったし、どの星の子供ともすぐに仲良くなれた。
宇宙中に友達がいた。
おかしいと気付いたのは、久しぶりに地球の友達に会った時だ。
以前は二人とも同じくらいの背格好で、好きな物も同じで、一緒に駆け回る事ができた。
いまや彼女は女性で、私だけが少女のまま。
踵の高い靴を履いた彼女は、もう理由なく走ったりしない。
「どうして?」
私は両親に聞いた。
星間航行は光速に近い速度で移動する。そのため、地上よりも時間の進みが遅いのだと彼らは言った。
突き付けられた残酷な現実に私は泣いた。
「皆と一緒に大人にはなれないの?」
私が聞くと、両親は静かに微笑んだ。
夜中の客
夜中の客
# ショート×2
堀 真潮
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13
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月のない夜の事である
炭焼きを生業とする男の小屋の戸を叩くものがあった。
山の中の一軒家である。もしや道に迷った猟師か木こりだろうかと、男は戸を開けた。
そこに立っていたのは十ばかりの娘と、弟と思われる幼子だった。
「一晩泊めていただけませんか」
娘は静かな声で言った。
こんな真夜中に子供二人が山の中にいるなんて、さては妖の類かとも思ったが、疲れ果てた姿がどうにも憐れで、男は二人を小屋に入れると、明日の分に取っておいた飯を雑炊にして食わせた。
子供はすっかり汚れていたけれど、着物は上等な物で、顔つきもどこか品が良い。
雑炊を食べ終わると、二人はきちんと座り直して男に告げた。
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