ここではないどこか。
今ではないいつか。
荒廃した街がそこにはひろがっていた。
かつては空を切るほど高くそびえ建っていたであろうビルは、周辺の小さなビルやを潰して折れ、周囲に散乱した硝子が太陽の光を受け輝いている。
かつて小さな人間達がここで過ごしていたであろう公園は、鉄棒がさびつき、ブランコは鎖が切れて落ちている。
人間の気配は、感じることが出来ない。
遊ぶ人のいなくなったドールハウスのようだと、それは思った。
人形と家だけがあって、肝心の遊ぶ人間が居ないのだから。
崩れ朽ちた建物の周りに、鎖が切れたブランコにに、黒い花の塊がなければの話だか。
それは鎖の切れたブランコに、おそらく鎖が切れる前にブランコに乗っていたのであろう、他の者より小さな黒い花の塊の前に立つと、それは静かに祈りを捧げた。