「ふああ、今日も今日とてお客はなし……か」
欠伸をかきながら呟いたのは店の店主であるエボだ。
エボは万屋を営んでいる。この店には他の店、それこそ城下町でも希少で取り扱っていない品まであるというのに。もうお昼も過ぎているが一向にお客が来る気配はない。
それもそのはず、エボの店はモンスターが住む森のすぐ近くに設営されていたのだ。
モンスターは人間にとって近寄りがたい存在である。モンスター狩りを生業としている者はいるが、そう多くはない。
よって、人がこの店に近寄ること自体稀なのだ。
「ここ、動物や植物の仕入れに向いているから便利なんだけどな。間違いだったか」
ため息とともに改めて落胆する。もう何度考えただろうか。
しかし、そんな気持ちを他所に扉の鐘が鳴る。遅れて声が聞こえる。
「こんにちわ」
これは驚いた。久しぶりの客だったのもあるが、扉から身をヒョイと出していたのは小柄な少女だった。