「俺が食わせてやってるんだよ!お前が家で楽してる間も、俺は汗水垂らして働いてんの!」
「はァ!?だからって浮気して良いわけ?ふざけんな!」
「だからッ、あれは浮気じゃないんだよ!遊びだって何回も言ってんだろ!!お前だって俺が居ない間、家事もしねえでパチンコ打ってんだろ! バレてないと思ってんのか!?」
「それ、はッ……べ、別に良いでしょパチンコくらい!ストレス発散してるだけで誰にも迷惑掛けてないし――」
激しい夫婦喧嘩の隅っこで、猫の人形を手に持った少女が一人、冷めた瞳で罵声の応酬を見つめていた。
少女の名前は朝比奈ルナ。月と書いてルナと読む、少し変わった名前の少女だ。ルナが見つめる先で、何度目か分からない喧嘩は、母の逃亡で幕が降りた。
父はルナに目を向けることさえせず、酒を呑み干しては布団でいびきを掻いている。
それを見つめたルナは呟いた。
「……そうだ。星を捕まえに行こう」